NHK特集「日本人はなぜ戦争に向かったのか」に思う

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NHK特集を見た。「日本人はなぜ戦争に向かったのか」の第2回目である。テーマは「巨大組織“陸軍”暴走のメカニズム」。衝撃であった。内容のほとんどは、保存されたテープを元に生の声を再現して進行している。そのどれをとっても私が始めて知る話であった。

昭和20年に生まれて、今日までの65年間に一度も耳にし、目にしなかった事実に衝撃を覚えた。私が小学校に入学したのが、昭和27年(1952年)、大学を卒業したのが昭和43年(1968年)である。その後社会に出て定年を迎えたのが平成17年(2005年)。その間、社会の中枢で生きてきた。教職に就くものは、児童や学生に教鞭を執った。政治の中枢に身を置いたものもいる。しかし戦争のことを何も教えてこなかった。この罪は大きい。

学生時代、昭和近代史について形だけ学んだ記憶しかない。だから知らないのは当然と開き直るつもりはない。学校で学ぶ以外にも、自分で学ぶ機会はいくらでもあった。しかし学んでこなかった。これは罪である。事実に耳を塞いできたのかもしれないが、恐ろしい。

太平洋戦争に至るきっかけは、3人の将校が国家体制の生ぬるさに危機感を覚え、決起することから始まったと紹介した。きっと国を思い、国を憂いて、考え抜いた結果かも知れないが、しかしその後太平洋戦争へ突き進んでいく。

今の世の中とどこか似ていないか。

いやそこまで国を憂い、国を思う輩はいないと言えるか。私はいると思う。

その人達には、このNH特集を見て欲しいと願う。私たちが教えてこなかった罪を代弁してくれる映像だと感じる。

当時も今も国民がメディアに左右されるのは、同じだ。何が真実で何が間違っているのか、少なくとも自分の価値観、考え方で物事を判断できなければ、流される。これが危険だ。

今、どの新聞を開いても、主張する論評は大きく変わらない。新聞各紙の論評が国民の考え方のベースになってしまっているとの自覚があるのだろうか。国民を先導しているという自覚があるのだろうか。国民はメディアに流され、自分で考えることを放棄していることの自覚があるのだろうか。

当時のメディアもまた戦争へ突き進んでいく手助けをしたのではないかとの思いが消えない。

今、自分なりに、昭和史を勉強し直そうと思っている。

恐ろしいことだ。